眠りの中の世界は恐怖の世界。私は、そこに入り込み、さんざん辛いめに合い、最後に必ず一人ぼっちにされ、うっすらと目が覚める。
子どものころは、迷子になって、草木の生い茂った森の中や、でこぼこ岩の山道をさまよい、夜になると獣の鳴き声が聞こえ、足元に蛇やら虫やらが這い寄ってくる。あっちへこっちへ逃げ回り、最後に川の中に落っこちる。目が覚めると、布団が水濡れになっている。そんな感じで、しょっちゅう寝小便をしていた。
少し大きくなってからは、学校の便所が嫌だった。大便をするのは泣きたいほどだった。汚かった。便器に先に入ったやつのが残っている。黄色いの黒いの、それぞれに臭くてたまらない。出ると必ず臭いが衣服に付着している、友だちのそばに恥ずかしくて行けない。そうして一人ぼっちになる。
子どもの姿で出てくる夢を見ると、最後のほうには必ずトイレを探し回っている。なかなか見つからない。やっと見つけたら、やっぱり汚い。別を探そうと動き回るうちに迷子になる。夢の初めに一緒にいた人間たちの姿は消えている。見たこともない場所に、たった一人でいる。何年たっても、何度も何度も、よく似た夢が繰り返す。
こういうのをトラウマというのだろうか。
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