ヒナゲシ(雛芥子)の名は子供のころにアグネス・チャンの歌「ひなげしの花」で知り、実際の花を見て確認したのは、ずっと先の大人になってからだった。
ポピーの名を知ったのは、おそらく自動車に乗り出してから芳香剤のコマーシャルでのことだったように思う。ヒナゲシを英語でポピーと言い、カッコよさや音の響きが時代に合って一般的に使われるようになった。それはたぶん間違いない。
花の名に興味を持ち、かなりの年数にわたりコツコツ取り組んできた今になって改めて確かめると見えるもの感じることが出てくる。
園芸という趣味の世界、あるいは花や樹木を商品とするビジネスの世界では、常に目新しい刺激的な種が多くの人の手で世に送り出されている。そこではインパクトがあり購買意欲をそそるようなネーミングがなされる。
園芸の花としての多数に受け入れられるのは洋風の名前で、一部の頑固な人々は伝統的な名称をよしとする。そうして洋風を主としながら和風を併記するという折衷が図られ、ずっと続いていく。ポピーとヒナゲシの位置づけもそのように見える。
花屋の店先、家庭の植栽、学校や公園の花壇でみる花は「ポピー」と呼ばれ、名札や図鑑や教科書には「ヒナゲシ」が併記される。それが今のありさまだ。
ところでポピー(ヒナゲシ)の学名は Papaver rhoeas で Papaver はケシ、あの麻薬アヘンの原料となる植物だ。英名は Corn poppy でポピーはここから取った日本語とも言えそうだ。鮮やかな園芸品種の数々を「何とかゲシ」と呼ぶのはそぐわない。ポピーには可愛らしい響きがある。日本人の言葉のセンスのなせる技のようにも思える。
ポピーの本家イギリスではシャーレポピーとして多彩な花がつくられている。これにアイスランドポピーとカリフォルニアポピーを加え御三家になっているようだ。世界には多数のポピーがある。花の大きなオニゲシ(鬼芥子)はオリエンタルポピーと呼ばれている。
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